英語ができるのに年収が上がらないとき、原因は英語力の不足ではなく、その英語が売上・コスト・意思決定のどれにもつながっていないことがほとんどです。 給与を動かすのは職種、責任の大きさ、代わりの見つかりにくさ、業界、経験、事業への影響で、英語はそれらをより条件のよい仕事へ届かせるときに初めて効きます。
ですから、次の一手はスコアをもう50点上げることとは限りません。今の仕事で英語が何を生んでいるかを確かめ、足りないのが「英語」なのか「英語を使う椅子」なのか「英語で届ける中身」なのかを切り分けるのが先です。
「英語ができる人は年収が高いのか」というデータの読み方は英語力と年収の関係で扱っています。ここで考えるのは、もう英語はある程度できるのに給与が動かない場合の話です。
給与の決まり方に「英語力」という軸はほとんどない
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査は、賃金の差を役職、産業、企業規模、年齢、学歴などの軸で集計しています。英語力の軸はありません。この統計だけで英語の効果は測れませんが、日本の賃金の差がどこに表れやすいかは見えます。
| 軸 | 2025年6月分の所定内給与(月額・男女計) |
|---|---|
| 役職 | 部長級 63.6万円/課長級 52.9万円/係長級 39.9万円/非役職者 31.1万円 |
| 産業 | 金融業・保険業 43.7万円/情報通信業 40.6万円/製造業 33.0万円/宿泊業・飲食サービス業 27.7万円 |
役職の数字は雇用期間の定めがない一般労働者が対象で、部長級は非役職者の約2倍です。平均年齢も勤続年数も違うので単純比較はできませんが、責任の範囲と働く業界で給与の水準が大きく変わることは読み取れます。
もう一つ、英語を使う場所そのものが限られているという事情があります。IIBCの2022年調査では、TOEICを活用する上場企業(有効回答220社)の59.1%が「英語は海外との取引がある部署だけで使われる」と答えています。TOEICを活用している企業に限った、やや古い調査ですが、英語を評価する会社でも使う部署は限られるという実感とは合います。
同じ調査で、昇進・昇格の要件や参考にするTOEIC L&Rスコアの平均は、課長で560点、部長で555点でした(回答企業数は各25社、15社と少数)。昇進の場面でスコアが見られるとしても、基準を超えたあとの上積みが評価されるとは限らない、というのがここからの判断です。
年収が動かない人に重なりやすい状態
責められるような話ではありません。英語を身につけた努力は本物で、単に努力の行き先と給与の決まり方がずれていることが多いのです。
今の職務に英語を使う場面がない。 国内顧客だけの営業や社内管理の部署にいると、どれだけ英語ができても仕事の成果は変わりません。評価する側も見る材料がありません。
英語を使っているが、取り次ぎで終わっている。 海外からのメールを訳して担当者へ回す、議事録を英訳する、といった仕事です。会社には助かる存在でも、判断や数字の責任は別の人にあるため、等級や給与に反映されにくくなります。
職務の説明が「英語ができます」になっている。 面接や評価面談で強みを聞かれて英語が先に出るなら、採用側には何の専門家なのかが見えません。「英語で何をしてきた人か」が空欄の状態です。
成果を事業の言葉で語れない。 「海外拠点との調整を担当」は業務の説明で、成果の説明ではありません。納期を何日縮めたか、どの案件を受注したか、どのトラブルを防いだかまで言えると、英語の価値が初めて相手に伝わります。
給与の仕組みの中で上限に近づいている。 等級ごとに給与の幅が決まっている会社では、個人の英語力が高くても等級が変わらなければ給与は大きく動きません。この場合、問題は本人ではなく環境です。
弱い組み合わせと強い組み合わせ
差が出るのは英語力の高さより、英語が何に掛かっているかです。次の表はEigoHeroの判断による例で、統計ではありません。
| 伸びにくい形 | 理由 | 強くなる形 |
|---|---|---|
| 英語×メールの取り次ぎ | 判断と責任が他者にある | 英語×貿易実務で、納期や条件の調整を自分で決める |
| TOEICスコア×職務実績なし | 能力の証明で、成果の証明ではない | スコア×海外案件を1件やり切った実績 |
| 英語×国内完結の営業 | 英語が成果に関係しない | 英語×海外顧客や外資製品の売上責任 |
| 英語×経理の入力作業 | 英語の出番がほぼない | 英語×海外子会社の連結や監査対応 |
| 英語×技術文書を読むだけ | 他のエンジニアとの差になりにくい | 英語×海外チームとの設計議論やレビュー |
| 日常会話×雑談力 | 仕事の結果に結びつきにくい | 会議で論点をまとめ、合意を作る力×プロジェクト推進 |
例外もあります。通訳や翻訳のように英語そのものが職務の仕事では、英語が専門性です。ただ、その場合も分野知識や品質への責任で差がつきます。
英語がお金に変わる場面
英語が給与につながりやすいのは、英語がないとその仕事自体が成立しない場面です。
- 海外の顧客や代理店から売上を作る
- 海外本社や海外拠点と一緒に意思決定する
- 多国籍のチームやプロジェクトを率いる
- 英語の一次情報を読まないと判断できない専門職(法務、財務、IT、研究など)
- 外資系企業やグローバル展開する日系企業のポジションに応募する
外資系だから必ず給与が高いわけではなく、報酬の決め方は会社によって違います。職種ごとの年収の目安は英語を活かせる高収入の仕事にまとめています。
自分の状況を確かめるチェック
次の問いに、具体例を挙げて答えられるか確かめてください。
- 今の仕事で、英語がなければ成果が落ちる場面を3つ言える
- 英語を使った仕事の結果、誰の何が変わったかを数字で説明できる
- 「英語以外の専門は何か」と聞かれて一言で答えられる
- 英語を使う場面で、自分が判断した経験がある
- 自社で給与が大きく上がる条件(等級、役職、職種)を知っている
- 希望する職種の求人を読み、求められる英語の場面を把握している
- 英語の会議で、自分から提案や反対意見を言える
詰まった問いによって、原因の見当がつきます。
| 詰まった問い | 考えられる原因 |
|---|---|
| 1つめ・4つめ | 英語を使う椅子がない、または責任がない |
| 2つめ・3つめ | 専門性と実績の言語化が足りない |
| 5つめ | 社内の評価軸を把握できていない、または環境の上限 |
| 6つめ | 市場の要求を知らないまま勉強している |
| 7つめ | ここだけは英語力が実際の壁になっている |
状況別の次の一手
| 今の状況 | 次にやること |
|---|---|
| 英語を使わない部署にいる | 海外案件の補助や海外拠点との窓口に手を挙げる。異動の条件を確認する |
| 英語は使うが取り次ぎ中心 | 調整の一部を判断まで引き受ける。結果を記録し、評価面談で示す |
| 専門性が見えない | 今の職種を軸に、英語と掛けられる領域を一つ決める |
| 実績はあるが社内で上限 | 職務経歴を書き、外資やグローバル企業の求人で市場の反応を確かめる |
| 実務で話す場面が壁 | スコアではなく、会議と交渉の練習に切り替える |
| そもそも英語の仕事が未経験 | 職種選びから順に組み立てる |
例として、メーカーの営業事務で海外代理店とのメールを担当している人(架空の例)なら、まず納期調整の判断を任せてもらい、遅延を減らした件数を記録することから始められます。TOEICの追加受験より、職務経歴書に書ける一行が増えるほうが次の選択肢に直結します。
どの専門と組み合わせるか迷っているなら、職種ごとの違いを比べてみてください。
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社外の市場を確かめたい段階なら、外資・ハイクラス転職サービスの比較が入口になります。話す力が壁だと分かった人はビジネス英語の実践まとめへ、英語を使う仕事が未経験の人は何から始めるかの順番へ進んでください。転職すれば必ず年収が上がるわけではありませんが、自分の英語がどこで値段がつくかを知ることはできます。
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