最初にやるのは英語の勉強ではなく、「仕事で英語をどのくらい使いたいか」を決めることです。 英語を使う仕事は1つの職種ではなく、月に数通の英文メールを読む仕事から、海外の取引先と価格を交渉する仕事まで幅があります。使う量を決めたら、今の経験が活きる職種を選び、実際の求人で足りないものを確かめ、最後に選考を止めている英語だけを補います。
先に勉強を始めると、目標が「TOEIC何点」になり、応募先も職務経歴書も決まらないまま時間が過ぎがちです。英語は、専門性や経験と組み合わせたときに転職市場で評価されやすくなります。その順番で進めるための7ステップです。
順番を逆にしないほうがいい理由
採用する側が知りたいのは、英語ができるかどうかだけではなく、その英語でどの仕事を進められるかです。たとえば貿易の仕事について、厚生労働省の職種資料は英語能力に加えて、貿易取引の国際ルールや通関、国際輸送、外国為替などの専門知識が必要だと整理しています。英語と仕事の知識は、セットで求められています。
また、必要な英語は職種によって別物です。文書の正確さが問われる仕事と、会議の場で即答する仕事では、鍛える場所が違います。応募先が決まる前に英語の総合力を上げようとすると、不要な部分にも時間を使うことになります。
例外は、英語の求人票を読むのも難しい段階の人です。この場合は基礎の学習を並行して進めてください。ただし、職種を考える作業まで後回しにする必要はありません。
ステップ1:どのくらい英語を使いたいかを決める
次の5段階のうち、入社してすぐの自分が無理なくこなしたいのはどこか、3年後はどこにいたいかを決めます。
| 段階 | 英語の使い方 | 仕事のイメージ |
|---|---|---|
| 1 | ほぼ読むだけ | 英語の資料やマニュアルを読む |
| 2 | メール中心 | 海外拠点や取引先と文面でやり取りする |
| 3 | 定例の会議がある | 週に数回、英語の会議で報告や質問をする |
| 4 | 毎日、国をまたいで働く | 海外の同僚と日常的に調整し、進める |
| 5 | 交渉・マネジメント | 価格や条件を交渉する、海外のメンバーを率いる |
「ペラペラになって外国人と働きたい」という希望は、たいてい段階4か5です。「英語を腐らせたくない」なら、段階2や3で十分満足できることもあります。今の英語力ではなく、使いたい量から決めるのがポイントです。
ステップ2:今の強みを棚卸しする
英語を除いて、自分が仕事で何をしてきたかを書き出します。
- どの業界の、どんな顧客や相手と働いてきたか
- 自分が任されていた範囲(担当・判断・予算・人数)
- 数字で示せる結果、改善したこと
- 他部署や社外と調整した経験
- 使えるツール、資格、業務知識
「営業しかしていない」「事務だけ」と感じる人も、細かく見ると材料があります。
例:国内メーカーで受発注を担当してきた人の場合、「納期調整」「在庫の判断」「取引先との条件確認」は、そのまま海外取引の実務につながります。足りないのは英語の経験そのものより、英語でそれをやった実績だけかもしれません。
ステップ3:現実的な職種を選ぶ
自分の経験に近いものから候補を2つか3つに絞ります。下の表は職種の典型的な傾向をEigoHEROが整理したもので、実際の英語量は会社とポジションによって変わります。
| 職種 | 英語の主な使い方 | 活きる経験 | 先に埋めたい英語 |
|---|---|---|---|
| 海外営業 | 商談、条件交渉、メール | 法人営業、業界知識 | 説明と交渉、商談後の文面 |
| 外資系の日本市場向け営業 | 顧客は日本語、社内報告は英語のことも | 国内営業の実績 | 社内報告、数字の説明 |
| カスタマーサクセス | 本社・製品チームとの連携 | 顧客対応、SaaSの知識 | 課題の要約と英語での社内連携 |
| 人材紹介・採用 | 英語の候補者面談、本社との調整 | 営業、人事、採用 | 面談での聞き取りと質問 |
| エンジニア | ドキュメント、レビュー、会議 | 開発経験 | 読む力、書く力、設計の議論 |
| マーケティング | 本社との調整、英語の資料 | 施策の企画、数字の分析 | 資料作成、施策の説明 |
| 経理・財務 | 本社報告、英文の決算資料 | 決算、簿記の知識 | 会計用語、数字の説明 |
| 貿易・輸出入 | 書類、メール | 受発注、物流の知識 | 正確に読み書きする力 |
| ホテル・旅行 | 接客、問い合わせ対応 | 接客、運営の経験 | 接客場面の聞き取りと応答 |
厚生労働省のjob tagでも、商社営業は貿易取引に外国語での交渉が伴うと説明され、営業事務は外資系やグローバル企業で外国語の会話や読解が必要になる場合があるとされています。同じ「英語を使う」でも、求められる形が違います。
選ぶときは、今の経験から一歩だけ動くのが現実的です。業界と職種と英語の量を同時に3つ変えると、経験を説明できず選考で苦戦しやすくなります。変えるのは1つか2つに抑えてください。組み合わせごとの強みは英語と専門性の組み合わせを比べた記事で詳しく見られます。
ホテル・旅行は、英語を使う機会は多い一方で、英語力そのものがキャリアの伸びに直結するとは限りません。将来どのポジションを目指すかまで考えて選ぶとよいでしょう。
ステップ4:英語の不足を求人で確かめる
候補の職種で、実際の求人を10件ほど集めます。見るのは「TOEIC○点」よりも、次の点です。
- 英語を使う相手は誰か(顧客、本社、海外工場)
- 手段は何か(メール、会議、資料、電話)
- 頻度はどれくらいか
- 「英語ができること」は必須か、歓迎か
これを表にすると、どの技能が何件で求められているかが見えてきます。読む・書く・会議・プレゼン・交渉・面接のうち、どれが足りないかを分けて記録してください。
求人の「ビジネスレベル」という表現は幅が広いので、外資系で実際に必要な英語力の整理と照らし合わせると判断しやすくなります。
ステップ5:職務経歴書とLinkedInを整える
英語の勉強より先に、ここを進めてください。書類を作ると、自分の経験のどこを英語で説明できないかがはっきりします。
- 日本語の職務経歴書で、担当範囲と数字を整理する
- 外資系や英文の書類が必要な求人が候補にあるなら、英訳ではなく英文レジュメとして作り直す
- LinkedInのプロフィールを、目指す職種の言葉に合わせる
- 英語の経験が少なければ、英語を使った場面を小さくても具体的に書く
例:「英語でのメール対応あり」よりも、「海外サプライヤー3社と納期調整のメールを週に数回やり取りし、欠品を防いだ」のほうが、何ができるかが伝わります。数字は事実の範囲で書いてください。
ステップ6:市場で試す
書類ができたら、英語が完璧になる前に一度試します。
- 転職エージェントに2〜3社相談し、候補の職種で書類が通りそうかを聞く
- LinkedInなどでスカウトの反応を見る
- 本命ではない求人にいくつか応募し、書類と面接の感触を確かめる
ここで得たいのは内定よりも情報です。どの段階で、何を理由に止まるかを記録してください。書類で落ちるなら経験の見せ方や職種の選び方、面接で落ちるなら回答の中身や英語が原因かもしれません。英語が理由だと思っていたら別の理由だった、ということも起こります。
今の会社の中で英語の案件に手を挙げる方法も、立派な市場テストです。海外拠点とのやり取りを一つ担当するだけで、職務経歴書に書ける実績ができます。
外資系や外資のハイクラス求人が候補に残るなら、外資系に強い転職サービスの比較で相談先を選べます。
ステップ7:選考を止めている英語だけを補う
ここで初めて、英語の学習計画を立てます。ステップ4と6の結果をもとに、次のように絞り込みます。
| わかった不足 | やること |
|---|---|
| 求人のTOEIC条件に届かない | その点数に必要な分だけTOEIC対策をする |
| 英語面接で詰まる | 想定質問への回答を自分で作り、声に出して繰り返す |
| 会議で話せない | 30秒で答える練習、聞き返しの練習(会議で話せない人の練習法) |
| メールの文面に自信がない | 実際の業務メールを型にして書く練習をする |
| 専門用語がわからない | 目指す職種の英語の資料を読み、単語を集める |
条件を満たしていない部分から順に、1つずつ片付けていきます。全部を同時に伸ばそうとしないことです。
あなたの場合はどこから始めるか
- 英語の実務経験がない:ステップ1〜3を先に。今の職種と同じ仕事を、海外と関わりのある会社で探す
- 英語はできるが専門性に自信がない:ステップ2に時間をかける。英語の仕事に就いてから専門を伸ばせる職種を選ぶ
- 経験はあるが英語が不安:ステップ4と6を先に。必要な英語が想像より狭いことがある
- すでに何社か落ちている:ステップ6の記録を作り、原因を切り分ける
今週やること
- 5段階の表で、入社直後と3年後の段階を決める
- 英語以外の経験を30分で書き出す
- 候補の職種を2つに絞り、求人を10件集めて「相手・手段・頻度」を記録する
ここまでで、勉強すべき英語の範囲はかなり狭くなっているはずです。
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